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疾患の解説

猫の歯肉炎が治らない……抜歯はいつ必要?薬で改善しない慢性歯肉口内炎の治療と判断基準

「薬を飲んでいる間は良くなるけれど、やめるとまた悪化する」
「抜歯を勧められたけれど、本当に必要なのだろうか」
と悩まれている飼い主様は少なくありません。

猫の口の炎症には、歯周病、歯の吸収病巣、若齢性の歯肉炎、慢性歯肉口内炎など、さまざまな病気があります。なかでも「猫の慢性歯肉口内炎」は強い痛みを伴いやすく、歯石除去や薬による治療だけでは十分に改善しないことがある病気です。
そのため、歯磨きや抗生剤、ステロイドなどの内科治療を続けても、なかなか改善しないケースがあります。
この記事では、猫の歯肉炎で抜歯を検討するタイミングや判断基準、抜歯後の生活について詳しく解説します。

猫の歯肉炎が治らない理由

猫の歯肉炎の中でも特に重症化しやすいものに、「猫の慢性歯肉口内炎」があります。
猫の慢性歯肉口内炎では、歯の表面に付着する歯垢などの刺激に対して、免疫系が過剰に反応していると考えられています。
ただし、原因が完全に解明されているわけではありません。
猫カリシウイルスなどの感染や免疫異常など、複数の要因が関与するとされており、原因は一つではありません。

そのため、歯石を取るだけでは十分に改善しないことも珍しくありません。

まず「どの病気による炎症か」を調べます

猫の歯ぐきが赤いからといって、すべてが慢性歯肉口内炎とは限りません。
まずは口腔内を詳しく確認し、歯周病、歯の吸収病巣、折れた歯、口腔内腫瘍、慢性歯肉口内炎などを鑑別します。
慢性歯肉口内炎と診断された場合は、抜歯が治療の中心となります。

薬による治療が不要というわけではありません。
強い炎症や痛みがある場合には、状態に応じて以下の治療を行います。
・鎮痛薬
・抗炎症薬
・必要に応じた抗菌薬
・ステロイド
・シクロスポリンなどの免疫調整薬
・猫インターフェロン
慢性歯肉口内炎と診断された場合には、内科治療を長期間繰り返すのではなく、炎症の程度や広がりに応じて、臼歯部抜歯または全顎抜歯を検討します。

抜歯を検討する判断基準

薬をやめるとすぐに再発する
ステロイドや抗生剤を使用している間は症状が落ち着いても、減量や中止をするとすぐに悪化してしまう場合があります。

長期間薬を使用し続けると、副作用のリスクも高くなるため、根本的な治療として抜歯を検討することがあります。

強い痛みで食事ができない

以下のような症状がみられる場合は、口の痛みが強い可能性があります。

・食べたそうにするのに食べられない
・食べ始めても途中でやめてしまう
・食べると口を気にする、声を出す
・食べ物を口から落とす
・よだれが増える
・よだれに血が混じる
・口臭が強くなる
・毛づくろいをしなくなる
・体重が減少する
・口の周囲を触られることを嫌がる

猫は痛みを隠す動物です。そのため、このような症状が現れている場合には、すでに炎症がかなり進行していることも少なくありません。

炎症が口の奥まで広がっている

歯ぐきだけでなく、奥歯より後方にある口の奥の粘膜に、赤み、腫れ、出血、潰瘍などがみられることがあります。
このような尾側口腔粘膜の炎症は、慢性歯肉口内炎を疑う重要な所見です。

このようなケースでは、内科治療だけでは十分な改善が得られないことがあります。

歯科レントゲンで異常が見つかる

見た目だけでは歯根や顎の骨の異常が分からないことがあります。そのため、全身麻酔下で口腔内を詳しく診察し、全顎の歯科レントゲンを撮影することが重要です。
これらの病変がある場合には、抜歯が最も有効な治療となることがあります。

なぜ抜歯で改善するの?

慢性歯肉口内炎では、歯の表面に付着する歯垢そのものが炎症を引き起こす刺激になっていると考えられています。
歯を抜くことで歯垢が付着する面積が減り、免疫への刺激も少なくなるため、多くの猫で炎症の改善が期待できます。

必ずすべての歯を抜くの?

必ずしも全ての歯を抜くわけではありません。
炎症の程度や歯科レントゲンの結果をもとに、
・臼歯部抜歯
 犬歯と切歯を残し、前臼歯と後臼歯を抜歯します。
・全顎抜歯
 犬歯や切歯を含め、すべての歯を抜歯します。

など、それぞれの猫に合わせて治療方針を決定します。

慢性歯肉口内炎では、薬による治療だけを長期間続けるよりも、炎症の原因となる刺激を減らすための抜歯が、最も有効性の期待できる治療と考えられています。

抜歯後は食事ができる?

「歯がなくなったら食べられなくなるのでは」と心配される飼い主様は多くいらっしゃいます。

しかし、猫は舌やあごを上手に使って食事をするため、多くの猫は抜歯後も問題なく生活できます。

実際には、

・ドライフードをそのまま食べられるようになる
・口の痛みがなくなり食欲が改善する
・毛づくろいができるようになる

といった変化がみられることも少なくありません。

術後しばらくはやわらかい食事を中心に管理しますが、痛みが改善することで生活の質が大きく向上する猫も多くいます。

抜歯しても治らないことはある?

抜歯によって多くの猫で症状の改善が期待できますが、100%完治するわけではありません。

抜歯後も軽い炎症が残り、内科治療を併用する必要がある猫もいます。

そのため、抜歯の範囲や術後の管理、必要に応じた内科治療を組み合わせながら、その子に合った治療を続けることが大切です。

品川WAFどうぶつ病院の考え方

猫の歯肉炎では、「薬を続けるか」「抜歯をするか」の二択ではありません。

大切なのは、

・現在どの程度の炎症があるのか
・どれくらい痛みがあるのか
・歯を残せる可能性はあるのか
・抜歯によって生活の質(QOL)の改善が期待できるのか

を総合的に判断することです。

当院では、歯科レントゲンなどによる詳しい検査を行い、内科治療で改善が期待できるか、抜歯が必要かを一頭一頭丁寧に評価しています。

「抜歯を勧められたけれど迷っている」「薬を続けてもなかなか良くならない」とお悩みの際は、お気軽にご相談ください。一緒に猫ちゃんにとって最も負担が少なく、生活の質を高められる治療法を考えていきましょう。