犬猫の免疫療法

1.免疫とはなんでしょう?

どうぶつの体は、発生したがん細胞を免疫によって排除しています。

体内で「自分の体の細胞」ではないものを「異物(いぶつ)」と呼びます。
細菌やウイルスなどは「異物」の代表例ですが、体には異物の侵入を防いだり、侵入してきた異物を排除したりして体を守る抵抗力が備わっています。
この仕組みを「免疫(めんえき)」といいます。

「免疫」で中心的な役割を果たすのは、血液の中にある免疫細胞の1つである白血球です。
白血球と、白血球に異物の情報を伝える役割をする樹状細胞(じゅじょうさいぼう)を総称し、免疫細胞と呼びます。

免疫は強まったり弱まったりしています。

免疫はいつも同じ状態ではなく、異物を排除するために強まったり、強まりすぎたときには弱まったりしています。

免疫療法とは、免疫本来の力を回復させてがんを治療する方法です。

体内で発生しているがん細胞を免疫により異物として判別し排除しています。
しかし、免疫が弱まった状態であったり、がん細胞が免疫から逃れる術を身につけて免疫にブレーキをかけることで免疫が弱まったりすることにより、がん細胞を異物として排除しきれないことがあります。
免疫療法は、体内の免疫を強めることにより、がん細胞を排除する治療法です。

2.犬猫のがん免疫療法

がん治療の3大療法

がん治療には、外科手術・化学療法・放射線療法の3大療法がこれまで主流を占めてきました。
これらの3大治療には、残念ながらさまざまな副作用が存在します。 症状やがんの種類によっては、その副作用に見合ったがんの治療効果が得られない可能性もあります。

これに継ぐ第4の療法として注目されているのが“免疫療法”

どうぶつ自身がもともと持っている免疫力を上げることができれば、恐ろしいがんをより良く治療することができます。
しかも、それが自分の体から取り出したリンパ球を使った治療であれば、限りなく副作用を少なくし、安全でどうぶつに優しい治療が可能となります。

免疫療法は、がん治療特有の苦痛を伴わない普通の生活を送れるようなQOL(Quality of Life)の改善を高める治療法として、今注目を集めています。

3.免疫療法の4つの特徴

1.食欲不振や嘔吐などの副作用がほとんどない

2.がんを大きくしない、といった延命効果が期待できる

3.痛みなどの自覚症状の改善が図れる

4.抗がん剤などの療法の相乗効果が期待できる

4.当院で提供している2つの免疫細胞療法

これらの療法は、がんなどの腫瘍に対する治療だけでなく、腎不全や免疫疾患(ドライアイ、炎症性腸疾患、多発性関節炎など)といった幅広い疾患に応用が期待されている治療法です。
当院では免疫細胞療法の専門設備を持ち、さまざまな免疫細胞治療に対応が可能です。

(1)活性化リンパ球(CAT)療法

わんちゃん、ねこちゃんの血液(10-12ml)からリンパ球を回収し、薬剤を加えてリンパ球の活性化・増殖を行ないます。
2週間後、およそ1,000倍に増えたリンパ球を洗浄・回収し、点滴で体内に戻します。

(2)樹状細胞ー活性化リンパ球(DC-CAT)療法

わんちゃん、ねこちゃんの血液(10-15ml)とすりつぶしたがん細胞(腫瘍組織)を、樹状細胞と一緒に培養します。
樹状細胞はリンパ球にがんを特異的に攻撃させるための目印を持つ細胞です。
この樹状細胞と活性化して1,000倍に増やしたリンパ球を投与することで、がん細胞に対してより特異的に攻撃させる治療です。

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