疾患の解説
猫の歯周病の症状・治療(歯石除去・抜歯)について
愛猫の口が生臭かったり、歯の根元や歯茎が赤くなっている、腫れている、出血しているということはありませんか?
猫ちゃんのほとんどが歯科疾患を抱えていますが、特に多いのが歯周病と口内炎です。
歯周病を発症してしまうと、進行するスピードが早く、強い痛みが出るだけでなく、食欲がなくなり、全身麻酔下での超音波スケーラーによる歯垢・歯石の除去・抜歯、デンタルケアとして歯磨きを行う必要があります。
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目次
麻酔前検査・料金
手術時に麻酔薬を使用しても問題がない状態かを事前に評価するため、麻酔前検査を行います。リスクを減らし、安全な手術を行うためにも、麻酔前検査は欠かせません。
検査項目
- 血液検査(血球計算)
- 静脈血液ガス測定
- レントゲン検査:心臓や肺、お腹の中の腸や胃などに異常がないかを評価し、結果を後日レポートでお渡しします。
- 心電図検査:不整脈などの異常がないかを評価します。心電図検査の結果を後日レポートでお渡しします。
- 血圧測定:高血圧や低血圧が見られないかを事前に評価する事で、当日の麻酔リスクを評価します。
料金
麻酔前血液検査(血球計算・16項目) | 会員価格5,665円(税込) 非会員価格7,865円(税込) |
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静脈血液ガス測定 | 3,300円(税込) |
麻酔前循環器検査(レントゲン検査・心電図・血圧測定) | 12,650円(税込) |
麻酔料金 | 44,000円(税込) ※体重加算分(小数点第一位四捨五入し5kg毎)+5,500円(税込み) |
麻酔医 技術料 | 44,000円(税込) |
麻酔料の内訳
- 留置針による血管確保:注射薬と点滴を静脈内に投与するために行います。
- 静脈点滴:水分と電解質を補給するために行います。
- 麻酔前投与処置:心身のストレスを軽減するため、または、麻酔導入を円滑にするために行います。
- プロポフォール導入麻酔、もしくはアルファキサン導入麻酔:即効性の高い鎮静薬を用いて、円滑な麻酔導入を行います。アレルギーの有無によって麻酔薬の種類を選択します。
- 術中モニタリング:バイタルサイン(呼吸数・心拍数・血圧・体温・血中酸素飽和度)をチェックすることで、適切な全身管理を行います。
- 人工呼吸器による呼吸補助:麻酔薬によって低下した肺機能の補助を行います。
- 吸入麻酔:麻酔を維持したり、麻酔深度を適切に調節するために行います。
※追加で使用する可能性のある麻酔薬
- フェンタニル、ケタミン、モルヒネ:麻薬性鎮痛薬です。強力な鎮痛を行うために使用します。
- ドパミンを使用した点滴:循環作動薬です。血液循環不全を改善するために使用します。
- ドブタミンを使用した点滴:循環作動薬です。心不全に伴う血液循環不全を改善するために使用します。
- フェンタニルパッチ:麻薬性鎮痛薬です。術後鎮痛のために使用します。毛を刈って皮膚に貼り付けて使用し、効果は3日間持続します。
- ※持病があり麻酔をかけることが心配な場合や、術前の検査から麻酔リスクが高い手術の場合、専門医による麻酔管理を行います。
歯周病の症状
実は、3歳以上の猫のほとんどが歯周病に罹患しています。また2歳までの若齢猫の70%以上が歯周病といわれています。
というのも、人間のように毎日歯磨きなどのデンタルケアを行なっている猫は少ないため、フードの食べかすが歯に付着し、歯垢や歯石が付着しやすいのです。歯石とは歯垢がカルシウムやリンなどのミネラルと結合し、石灰化することで硬くなったものです。歯石を放置すると歯石周囲に歯垢がたまり、細菌が増殖し、歯肉炎を引き起こします。
猫は人間よりも歯垢が歯石になるスピードが速く、だいたい1週間程度で歯石になってしまいます。
歯肉炎になると…
- アンモニア臭の口臭
- 口内炎やよだれが増える
- 歯茎や歯の根元で炎症が起こって赤く腫れる
などといった症状が出ます。
悪化すると、歯と歯茎の間にある歯周ポケットで細菌が増殖してしまい、歯周ポケットが歯の根元にむかって深くなっていきます。
そうなると、歯肉や歯槽骨が歯を支えられなくなり、顎が腐ってしまい、歯がグラグラし抜けてしまう歯周炎という状態になってしまいます。
歯周炎では、激しい痛みを感じるようになります。激しい痛みによって、ドライフードを嫌がるようになり、柔らかいウェットフードしか食べることができなくなります。さらに炎症が進み、歯の根元・骨(歯槽骨)・靭帯にまで炎症が達すると、顔が片側だけ腫れたり、頬に膿が溜まり、皮膚に穴が開くこともあります。
口腔内の細菌が全身を回ることで、肝臓・心臓・腎臓にも症状が出る事もあり、歯周病は猫の健康に大きく関わる怖い病気です。
歯周病の原因
猫の歯周病の原因のほとんどは、食べカスなどからできる歯垢(プラーク)に含まれる細菌が原因です。
歯の根元に歯垢が溜まると細菌が繁殖して、歯肉などで炎症が起こります。
また、猫の場合はヘルペスウイルス・カリシウイルス・白血病ウイルス感染症・猫免疫不全ウイルス感染症などといった免疫力を低下させる感染症のせいで、歯周病になってしまうことがあります。
歯の根元が赤くなっている、腫れている、出血しているという場合には、すでに歯周病を患っている可能性が高いため、動物病院で診察を受けた方が良いでしょう。
猫が虫歯になることはある?
猫は虫歯になる事はほとんどありません。というのも、虫歯はミュータンス菌と呼ばれる虫歯菌によって引き起こされますが、猫の口の中はアルカリ性ですので、酸性環境を好む虫歯菌が猫の口の中で生息することは困難です。
また虫歯菌が栄養とする糖質(甘いもの)を多く含む食べる猫は少ないため、虫歯になる事はほとんどありません。
猫の口腔内疾患で最も多いのは歯周病です。
歯周病の治療
猫の歯周病は早期発見・早期治療を行うことで、進行を食い止めることが可能な病気です。そのためには、口の中に溜まった歯垢や歯石を除去する必要があります。
無麻酔で行う歯石除去など歯の表面の汚れを落とすだけの処置では、歯周病の治療はできませんので、歯科治療を行なっている動物病院を受診しましょう。
全身麻酔下での超音波スケーラーによる歯垢・歯石の除去
全身麻酔をかけて、歯周ポケットの隙間に入り込んでいる歯垢や表面の歯石をスケーラーによって除去する処置を行います。
歯石を除去した後は、歯石が付着することを防ぐために研磨剤を用いて、歯の表面をツルツルに磨くポリッシングを行います。
抜歯
歯周炎が進行し、歯周ポケットが歯の根本まで形成され、歯がグラグラしている場合には抜歯を行うことがあります。
というのも、グラグラしている歯の根元が歯周病菌の巣になっていることが多いためです。そのような歯を放っておくと、顎が腐ったり、下顎骨折を引き起こしてしまいます。
また、抜歯の注意点としては、歯の根元を残さないように丁寧に処置を行うことが重要です。そのためには歯科レントゲンを使用し、ちゃんと根元までしっかり抜歯できているか確認することが必須になります。
投薬
術後や術前に炎症を抑えるために抗炎症薬や抗生剤を使用する場合があります。場合によっては免疫抑制剤を術後に数週間使用することもあります。
歯周病の予防には歯みがきが重要
周病を予防するためには、歯ブラシで歯みがきを定期的に行い、歯垢を溜めないことが重要です。歯周病が進行し、歯槽骨や靭帯などの組織で損傷が起き、歯が抜けるなどすると、もう元の状態に戻る事はできません。そして寿命に大きく関わってくる事もあります。
毎日歯みがきすることが望ましいですが、最低でも2~3日に1回は行いましょう。というのも、細菌の塊である歯垢(プラーク)が歯みがきでは取れない歯石に1週間で変化してしまうためです。歯石になってしまうと、超音波スケーラーなどの特殊な処置でしか除去できなくなりますので、こまめに歯みがきを行う必要があるのです。
口の中を触られたり、歯みがきを嫌がる猫がほとんどですので、子猫の頃から慣れさせておく必要があります。
歯みがきのやり方・コツなど詳しいデンタルケアの方法については獣医師に相談しましょう。
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