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疾患の解説

犬の皮膚病でよくある症状

犬の皮膚病でよくある症状|皮膚が赤い・黒い・かゆみ・かさぶた

愛犬が皮膚をかゆがっている、皮膚が赤かったり黒くなったりしている、背中やお腹にかさぶたがある などといった事はありませんか?

実は犬の皮膚は薄く繊細であるため(皮膚バリアが弱い)、皮膚の感染症やアレルギー性皮膚炎といった皮膚病が起こりやすいのです。

もし皮膚のかゆみや赤み、皮膚が黒ずんでいたり、フケがたくさん出ている場合には、愛犬が皮膚病を発症しているサインかもしれません。

また皮膚は体の中で1番大きな臓器であり、皮膚に異常が起きているということは免疫力が低下するような疾患(ホルモン病や腫瘍など)が隠れていることもありますので、皮膚症状のサインを見逃さずに動物病院を受診することが重要です。

犬の皮膚病で典型的な症状

皮膚をかゆがる

かゆみのサインは、後肢で引っかく、病変部をしきりに舐める、壁や床に擦りつける、噛むなどといった行動があります。かゆみの原因としては、アレルギー(アトピー性皮膚炎・ノミアレルギー性皮膚炎・食物アレルギー)、感染(マラセチア・細菌・ヒゼンダニ)、ストレス、腫瘍(皮膚型リンパ腫・肥満細胞腫)など様々です。

皮膚や毛が脂ぎって、フケがでる

皮膚や毛が脂っぽくなる脂漏症という病気があります。脂漏症になると皮膚のターンオーバー(角化)が異常を起こし、ターンオーバーが短くなることでフケが出ます。またそれにより炎症を引き起こします。

脂漏症は原発系続発性に分類されますが、原発性脂漏症は、シーズーやアメリカン・コッカー・スパニエルやウエスト・ハイランド・エリアなどといった犬種特異的に起こります。続発性脂漏症は、アレルギー性皮膚炎やホルモン病(甲状腺機能低下症)などといった疾患が原因となり発症します。

脱毛(毛が抜ける)

皮膚炎によりかゆみを伴う脱毛かゆみを伴わない脱毛があります。

かゆみを伴う脱毛は、アレルギー性皮膚炎などの皮膚炎が原因となり、自分で掻いたり、舐めたりすることで中途半端に毛が切れたり、折れたりすることで脱毛します。一方、かゆみを伴わない脱毛は、左右対称に脱毛することが多く、完全に毛が抜けてしまいます。原因としてはホルモン異常(甲状腺機能低下症・クッシング症候群)や発毛周期異常などによって脱毛が起こります。

ボツボツした発疹ができる

発疹とは皮膚にできるボツボツした隆起のことをいいます。

直径1cm以下の隆起を丘疹、1cm以上のものを結節と呼びます。またブツブツの中に入っている物質によって名前が異なり、膿が入っている病変を膿疱、液体が溜まっている場合は水疱といいます。

ノミアレルギー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、膿皮症などで発疹がみられ、皮膚のかゆみや赤みを伴う場合もあります。

犬アレルギー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎〜皮膚が赤い・黒い・かゆみ〜

アトピー性皮膚炎は小型犬で多く認められる皮膚炎で、ハウスダスト・花粉・ダニ・カビなどといった環境中のアレルゲンが皮膚の中に入り込むことで、免疫が過剰に反応し、かゆみや赤みなどといったアレルギー症状を引き起こします。

6ヶ月齢〜3歳未満の若齢犬で発症することが多く、アトピー性皮膚炎を発症する犬は遺伝的に皮膚のバリア機能に異常があるといわれています。特にシーズー、柴犬、トイプードルなどといった犬種でよく見られます。

アトピー性皮膚炎の初期症状はかゆみから起こります。かゆみから皮膚を掻いてしまうことで皮膚が傷つき、バリア機能がさらに弱くなってしまいます。

その結果、より多くのアレルゲンが皮膚に入り込んでしまい、さらに強いアレルギー症状を引き起こしてしまうのです。そのためアトピー性皮膚炎は完治を目的とした治療ではなく、痒みの管理や皮膚バリア機能を強くするスキンケアがメインとなることが多いです。

かゆみが出る身体の部位は顔・耳・目や口の周囲・腋・鼠径・お尻・前肢や後肢の先端で起こりやすいですが、背中には病変が出ることはほとんどありません。また、病変は左右対称にであることが多いです。

アトピー性皮膚炎によるかゆみが慢性的になると、皮膚が黒くなり、色素沈着を引き起こします。

ノミアレルギー性皮膚炎〜ぶつぶつとした発疹・かゆみ・かさぶた〜

ノミアレルギー性皮膚炎は、犬に吸血したノミの唾液に対するアレルギーによって起こる皮膚炎です。

尻尾の付け根などノミが生息する部位で症状が出ます。

症状としてはぶつぶつとした発疹やかゆみ・脱毛・フケなどが出ます、重度の場合はかさぶたができることがあります。

予防薬をノミが活発になる時期に使用することが重要です。

膿皮症〜湿疹・かゆみ・かさぶた〜

膿皮症とは、常在菌であるブドウ球菌が増殖することで皮膚が化膿してしまう皮膚疾患です。本来ブドウ球菌は皮膚に悪さをすることはないのですが、基礎疾患などが原因となり皮膚のバリア機能が低下してしまうことにより、皮膚で増殖・感染することで様々な症状を引き起こします。

症状としては、かゆみ・湿疹・脱毛・かさぶた・フケ・膿んだようなにおいが一般的です。

身体のどこでも膿皮症は発症する可能性はありますが、特にお腹と背中で起こりやすいです。

膿皮症の治療法は抗菌シャンプー、病変が様々な場所に存在する場合には抗菌剤を使用します。基本的には1ヶ月程度で完治しますが、再発することが多いため、基礎疾患の治療とスキンケアや皮膚のチェックを並行して行う必要があります。

マラセチア皮膚炎〜ベタベタする・かゆみ・赤み〜

マラセチア皮膚炎は、カビの一種であるマラセチアが原因となる皮膚炎です。

マラセチアは通常犬の皮膚に常在菌として存在していますが、皮脂を栄養源として増殖するため、脂漏症やアトピー性皮膚炎やホルモン疾患(甲状腺機能低下症・クッシング症候群)などといった基礎疾患がある場合には症状が悪化します。

シーズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ウェスト・アイランド・ホワイトテリアなどといった皮脂が多く、脂っぽい性質の皮膚を持つ犬種でよく見られます。また、高温多湿な梅雨の時期や夏で症状が急激に悪化することが多いです。

症状としては、かゆみ、皮膚がベタベタしたり、ベタついたフケが出たり、皮膚からカビ臭いにおいがします。

顎・鼠径・鼠径・耳といった比較的蒸れやすい部位で症状が出ます。

マラセチア皮膚炎の治療法はマラセチアを殺菌するシャンプー、重度な場合には抗真菌薬を使用します。

皮膚糸状菌症〜円形脱毛・赤み・かゆみ・フケ〜

皮膚糸状菌症は、カビである皮膚糸状菌が原因となる皮膚疾患です。他の犬や人にも感染する皮膚感染症です。

症状としては、円形に脱毛する、赤み、かゆみ、フケが認められます。

特に免疫力の低い子犬や老犬で起こりやすい皮膚病です。

外耳炎〜耳の痒み・赤み・においのする耳垢〜

外耳炎とは、外耳道と呼ばれる耳垢の通り道や耳介で炎症が起こり、耳が赤く腫れ、痒みを引き起こす皮膚疾患です。

外耳炎の原因はアトピー性皮膚炎、脂漏症・植物の種などの異物や腫瘍、ミミヒゼンダニの寄生、甲状腺機能低下症・クッシング症候群などのホルモン病などといった基礎疾患により、皮膚バリア機能が低下したり、耳を足で掻くことで、細菌やマラセチアの二次感染が引き起こされます。

症状としては、耳を擦り付ける、後ろ足で耳を掻く、においのする耳垢がたくさん出る、頭をブルブル振るうといったものが認められます。

普段から生理的現象として、犬は耳を掻く仕草をしたり、頭を振る仕草をすることがありますので、初期段階では飼い主様はなかなか気付きにくいことが多いです。

外耳炎は放っておくと、外耳だけでなく、中耳や内耳にまで炎症が広がってしまい、中耳炎・内耳炎を引き起こすことがあります。

外耳炎の治療としては、耳洗浄と点耳薬の投与を行います。耳の奥まで洗浄する必要があるため、外耳炎が疑われる場合、動物病院へ受診した方がよいでしょう。

また、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患の治療が上手にいっていない場合には、外耳炎が再発してしまいますので、基礎疾患の治療も並行して行う必要があります。

角下型疥癬症〜耳のかゆみ・分厚いフケが出る〜

角下型疥癬症は、皮膚ヒゼンダニの寄生が原因で起こる皮膚感染症です。犬ではセンコウヒゼンダニと呼ばれるヒゼンダニが皮膚にトンネルを作ることで、非常に強い痒みを引き起こし、分厚いフケが出ることが特徴です。症状は、特に肘・膝・かかと・耳の辺縁で出やすいです。角下型疥癬症は駆虫薬を使用することで改善します。

甲状腺機能低下症〜脱毛、皮膚が黒い〜

甲状腺機能低下症は老犬で起こるホルモン病で、甲状腺ホルモンの分泌が低下してしまうことで、脱毛・外耳炎、膿皮症などといった皮膚疾患を引き起こします。

特に高齢になって背中・尻尾・鼻梁(鼻の先端)が脱毛していたり、皮膚が黒く色素沈着している場合には甲状腺機能低下症の疑いがあります。

甲状腺ホルモンの補充療法を行うことで、皮膚症状やその他甲状腺機能低下症の症状は改善していきます。

荒井 延明先生

皮膚科担当医

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