疾患の解説
犬の膿皮症|かさぶたや赤い発疹ができる皮膚病の原因・治療について
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犬の膿皮症とは?
膿皮症とは、常在菌であるブドウ球菌が増殖することで皮膚が化膿してしまう皮膚疾患です。
本来ブドウ球菌は常在菌であり、健康な犬の皮膚で悪さをすることはありません。ですが、様々な原因により皮膚のバリア機能が低下してしまい、皮膚で増殖・感染することで様々な症状を引き起こします。
なぜ皮膚バリア機能が低下してしまうのかというと、アレルギー性皮膚炎などの皮膚病や甲状腺機能低下症、クッシング症候群などの免疫力を下げるホルモン病、皮膚刺激の強いシャンプーを使用している などといった原因があります。
そもそも犬の皮膚は人間の皮膚の1/3程度の薄さしかなく、非常に繊細な皮膚であるため、膿皮症などの皮膚感染症が起こりやすいのです。その元々弱い皮膚バリア機能がさらに弱くなってしまうと、膿皮症は頻発します。
膿皮症では膿が溜まった膿疱と呼ばれるできもの、かさぶた、脱毛などが認められます。
犬では膿皮症はよく起こる皮膚疾患ですが、猫で膿皮症を発症することはほとんどありません。
膿皮症は2種類あり、皮膚の表面や毛包のみに病変がある表在性膿皮症と皮膚の深く(真皮)まで病変がある深在性膿皮症に分類されます。表在性膿皮症は最もよく認められる膿皮症です。深在性膿皮症は、ジャーマン・シェパードでよく起こる皮膚病です。
犬の膿皮症の原因
膿皮症はブドウ球菌によって引き起こされますが、基礎疾患をもっている犬で発症することがほとんどです。
膿皮症を引き起こす基礎疾患としては、
アレルギー性皮膚炎(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎)
甲状腺機能低下症
クッシング症候群
脂漏症
といった基礎疾患が膿皮症の原因として考えられます。また、刺激の強いシャンプーを使ったり間違ったスキンケアをしていても、膿皮症になることがあります。
通常ブドウ球菌は皮膚で悪さをすることはありません。ですが、上記の基礎疾患がある場合には皮膚バリア機能が弱くなってしまうため、ブドウ球菌が増殖し、皮膚に感染してしまいます。深在性膿皮症は、ブドウ球菌だけでなく、緑膿菌や大腸菌が感染していることがあります。
膿皮症はどの年齢でも起こる皮膚病で、免疫力の低い子犬から様々な基礎疾患をもっている老犬まで幅広い年齢層で発症します。
膿皮症は基礎疾患の治療が上手くいっていないと何度も繰り返し再発してしまいます、そのような膿皮症を再発性膿皮症と呼びます。膿皮症の再発を防ぐためには、シャンプーや塗り薬などの治療と並行して、基礎疾患の診断をしっかり行うことが重要です。
犬の膿皮症の症状
初期症状としては、膿疱(白や黄色の膿が溜まった状態)や丘疹(赤く皮膚が隆起した状態)が認められます。
その他の症状としては、
皮膚のかゆみ、赤み
脱毛
かさぶた、円形にふけが出る
色素沈着
膿んだようなにおいがする
といった症状が一般的です。
身体のどこでも膿皮症は発症する可能性はありますが、特にお腹と背中で起こりやすいです。
表在性膿皮症の診断
細胞診
膿皮症の診断は、患部からテープで皮膚の細胞などを採材し、染色液で染色を行い、細菌や好中球の増殖を確認します。
膿疱がある場合には針で嚢胞を刺し、出てきた内容物を顕微鏡で確認し、細菌や好中球の存在を確認します。
膿皮症が再発を繰り返す場合には、耐性菌に感染していたりその他の基礎疾患に罹患している可能性があるので、細菌培養検査やホルモン検査などの追加検査を行います。
細菌培養検査・薬剤感受性検査
細菌培養検査は、耐性菌と呼ばれる一部の抗生剤に耐性を示す細菌を検出する検査です。抗生剤を使用しても、なかなか膿皮症が良くならない場合に行います。薬剤感受性検査は、検出された細菌がどのような抗生剤が効くのかを調べる検査です。
耐性菌は抗生剤の乱用により生み出された細菌で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などが有名です。
犬の膿皮症の治療(シャンプー・塗り薬・抗生剤)
膿皮症の治療法は基礎疾患の治療はもちろんのこと、抗菌シャンプーによる薬浴や塗り薬、場合によっては抗菌剤を使用します。
表在性膿皮症であれば3週間〜1ヶ月程度、真皮まで病変が広がっている深在性膿皮症であれば1ヶ月以上で治療に時間を要します。
抗菌シャンプーによる薬浴
クロルヘキシジンを含有したシャンプーを使用します。週に2回の頻度でシャンプーを行います。
塗り薬
膿皮症の病変が限局的であれば、抗生剤を含有している塗り薬を使用するとよいでしょう。
抗菌剤
シャンプーを使用しても、なかなか膿皮症が治らない場合には抗生剤を使用することがあります。
毛刈り
患部の周囲の毛を刈り取り、細菌がさらに感染することを防ぎます。 そして、2%のクロルヘキシジン溶液により患部を洗浄することで消毒します。
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